研究レシピ公開アプリ”Re:Search”
「科学」を身近にするアプリを考えている。
名前は「Re:Search」、研究とこのアプリの評価軸の一つである「再試験」を強調したネーミングだ。変わるかもしれない。
今回のアプリは現在製作中ではあるが、難しい点もある。その辺りをお話ししたいと思う。
アプリ概要
アプリとしては「研究版クック○ッド」になる。レシピ投稿サイトだ。
ユーザーは自分の行った研究のレシピ〜結果までを投稿する。
他のユーザーはそれを「面白い!(いいね)」や質問・感想という形で交流を行う。
また、投稿には「再試験」が評価軸として設定される。
投稿には「再試験」と「後続実験」がツリー状につながっていて、ユーザーはその研究の流れを一覧することができる。
研究にはそれぞれ「深さ」があり、
・満月(一番ライト)
・半月(中間)
・新月(科学ガチ勢)
のラベルわけ、棲み分けをしようと思っている。
アプリのアイデア自体はとても簡素な作りになると思う。そもそも僕一人で作って僕一人で運営するのだから、あまり難しいものは作れないし、運営できない。
このアプリに投稿される「研究」は何も学術的に厳密なものだけではない。階層分けはしようと思っているが、厳密な研究から主観が入る自由研究まで、どんな実験もレシピと結果があれば投稿できる。そしてそれを排除しない、そんな場所を考えている。
このアプリによって、最初は見る専門だったユーザーが「僕も科学できるかもしれない!」と思って一人の科学者になる。日常に疑問を抱き、変数を決定し、結果を得る。もしかしたらその結果を考察することもあるかもしれない。
そんな場所を作りたい。
分野によっては「ZENN」や「Qiita」が場所としてあると思う。
その全体版、科学版と捉えていただけたら嬉しい。

アプリに期待すること、期待できること
このアプリには「研究・科学」という、少し日常から遠い存在のものを「実はそこまで遠い存在ではない」と思わせてくれることを期待している。
AIが何でも答えを教えてくれる昨今、疑問は簡単に解決できるのかもしれない。
自分で研究なんて非効率で遠回りな気もする。
でも、だからこそ自分の手で研究することを楽しみたい。
そして、そんな楽しみ方をしている人を感じたい。
そんな思いでアプリを作っている。
「国民総研究者」とまでは言わないが、研究とは縁が遠かった方にも意外と研究は身近なものであると知ってほしい。そして、科学との向き合い方、評価の仕方もできれば知ってほしい。
そんなことが、このアプリが100点、いや120点の働きをしてくれれば実現できるかもしれない。
このアプリの問題点・危ない点
このアプリは上にも述べた通り、そこまで難しいものではない。
それでも開発できていないのはひとえに「問題点が多すぎるから」だ。
そしてそれを解決する方法もぼんやりとしか見えていない。しかも楽観的なシナリオで。
問題点1.似非科学がバズっちゃうよね(特に健康分野)
「厳密な科学でなくても投稿していい」とは言ったが、それを悪用(本人は悪用と思っていないかもしれないが)される可能性がある。
正直、投稿される研究全てが「正しく」なくても僕はいいと考えている。
このアプリの1番の目的は「科学の裾野を広げる」ことなので、楽しく科学ができればそれが一番だと思うのだ。
とはいえ、受け入れられない正しさもある。特に「健康分野」に関する投稿は正しくても正しくなくても受け入れられない。このアプリは病気を治すものではないし、健康に至るものでもない。
日常の簡単な気づきや疑問を解決するための場所であり、イデオロギーや利益のために存在してはならない。
ならない……が、どうしてもセンセーショナルな見出しや不安を解決するタイトルは目を引くと思う。
例えば、極端な話、「どんな病気も治す薬の研究!」みたいな投稿を作る。仲間内で再試験をしたということにしてみんなの目に映るようにする。
そうすることで利益誘導を行う、など。
対策はいくつかある。例えば、
・「健康」に関するトピックは投稿不可
・通報機能をつける
・投稿者に何らかの制限を設ける(課金者限定など)
・モデレーター制度を設ける
あたりだろうか。1, 2つ目はアプリとして最低限必要なものである。3つ目に関しては本末転倒だ。「科学の裾野を広げる」ことが目的なのに、投稿のためにハードルを設けてしまっては目的の達成が難しくなる。しかも、「ハードルを乗り越えて投稿されている」と、異なる事実の信憑性を上げてしまうかもしれない。
やはり最適なのはモデレーター制度か。
とはいえ、これにも問題がある。
・どうやってモデレーターを選ぶのか
・モデレーターの正当性はどのように評価されるのか
・モデレーターが処理できる範囲になるのか
・恣意的な運用にならないか
などなど……
まだ一つ目なのに考えるだけで頭が痛くなってきた。これだからこのアプリはまだ作れないんだ。
問題点2.危険な実験が出回っちゃうよね
わざと他人を害す実験を投稿する人は少ない……と信じたいが、そうでなくても危険な実験はセンセーションだ。
「爆発」、「放電」、「炎上」……どれも実験としては面白そうだ。
そもそも、身近なものですら混ぜたら毒ガスが発生する組み合わせがある。それを「研究」などとして投稿して注目を得るのが正しいアプリのあり方であるとは決して思わない。
実験に際して専門的な知識や十分な注意が必要な実験が「自己責任」のもとセンセーショナルなレシピとして公開されるのは、プラットフォームとしては中々許容し難い。
何でもかんでも「自己責任」で片付けられる時代ではない。プラットフォームを運営する責任として、危険な実験にはラベリングをする必要がある。
一方でそういった類を禁止にしたくもない。
このアプリは「どんな研究も投稿できる」アプリにしたい。それは汚れだけを濾しとった清流だけを流したいわけではない。
危険も含めてアプリの空気感にしたい。というか、危険な実験は「危険だ」という嗅覚をつけてもらいたい。
問題点3.エンジョイ勢がガチ勢に詰められちゃうよね
このアプリは理想的に流れとして「科学ガチ勢の研究に憧れて今まで馴染みのなかった人が研究をしてみる」ということを考えている。
その結果、投稿された実験が全て正しく、科学的なものとは限らないだろう。
その時、「質問」という刃が初心者を襲う可能性がある。
「素人質問で恐縮ですが……」から始まるフレーズはもはや人口に膾炙しているが、それと同じことがこのアプリでも起きる可能性がある。
このアプリは統計処理なんて求めない。何なら対照実験すら求められず、「やってみたらこうなった」ということを投稿してもらいたい。
それは科学ガチ勢からしたら許せるものではないかもしれない。
・対照実験がない
・統計処理されいてない
・論理の飛躍
・入口と出口が違う
・考察が投げっぱなし
などなど……
あくまで運営は「空気」に任せたいが、科学ガチ勢の力は初心者には強すぎるかもしれない。
かといって、科学ガチ勢の力をわざわざ抑制する意義も意味も見当たらない。そういう点では必要な犠牲になってしまうのかもしれないが、できる限り心折られぬよう、そして心折らぬよう祈るばかりだ。
総評:世に出すには危なすぎる
という結論になってしまう。
ただでさえ「サイエンスコミュニケーター」という仕事があり、科学館が各地にあるこの状況で、わざわざ必ずしも科学的に正しくない投稿を許容するプラットフォームを作るメリットが世界にあるのか。
それはわからない。今のところの僕は否定的に考えているから作る手を止めているのだろう。
でも、メリットもあると思う。
どうしても「自分で手を動かす」面白さを知ってもらいたい。
科学ガチ勢への入り口を叩いてもらいたい。
それは必ずしも子供だけが対象ではなく、大人ももちろん対象だ。
科学が遠い存在だと思っていた人、面白いことに興味がある人。
そんな人に科学の面白さを感じてもらいたい。
そんな思いでこのアプリを作っている。
この記事を読んでいるあなたがもし、何かしら協力してくれるなら嬉しい。それはアドバイスでも意見でも批判でもいい。このアプリをより良いものにするためにあなたの考えを聞かせてもらえたらとても嬉しい。
「空気に任せる」とかいう腑抜けたことを言っている僕に一発かまして、現実を見させてほしい。
……やっぱり「空気」じゃ性善説すぎるかな……
