供養話〜怪談じゃないよ〜
結論、これは僕が悪い話だ。
行動としても、内面としても間違っている話だ。
それでも、他の創作ではどうしても吐き出せなかった。
せめてここで、文章という形で吐き出して、供養させてほしい。
先日、モバイルバッテリーを失くした。
ものをなくすことはよくある、という方もいらっしゃるかもしれない。
ただ、僕はモノをあまり無くさない方だと自負している。
それがどこか「自己管理ができている自分」や「しっかりしている自分」の証明になるような気がしていて、自分のアイデンティティの一つであるのだ。
〜注意〜
間違ってもこれは他人を揶揄するものではない。
他の人がモノを無くすかどうかは僕にとって尊敬・嘲笑に値するものではなく、
強いていうなら、自分の人生というゲームの縛りプレイ程度に思って欲しい。
〜注意終わり〜
で、そんな自分がモバイルバッテリーを失くした。
しかもまだ1年くらいしか使ってないいいやつ。
それはそれは僕を動揺させた。
最後に使った場所は覚えている。あの店だ。
その後、そのバッテリーをみた記憶がない。
もしかしたらあの店に忘れたのかもしれない、電話してみよう。
「モバイルバッテリーを忘れたのかもしれないのですが、そちらにありませんか?」
「モバイルバッテリーですか?……ありませんね〜」
ガックリ、そこじゃないか。
じゃあ、部屋の中?
(全く記憶はないが)カバンから出して部屋に放り投げたのか?
そうして僕は1日かけて部屋を探し出した。
それでも見つからない。
どうしても見つからない。
まさか道中に落とすわけはない。
さすがにモバイルバッテリーなんて落としたらわかる。
スリにでもあった?まさか。だったらスマホを盗るだろう。
じゃあ、やっぱりあの店か?
確か、さっきは「モバイルバッテリー」としか伝えていなかった。
僕のやつはパッと見てモバイルバッテリーとはわからない。
もしかしたら店員さんがあれをモバイルバッテリーと認識していなかったのかも。
もう一度電話をかけてみる。
「申し訳ありません。以前電話した者ですが、モバイルバッテリーをそちらに忘れたかもしれません。白くてスマホ程の大きさで、模様は……」
「(1回目と違う方)少々お待ちくださいませ」→保留
「(おそらく1回目と同じ方)もしもし?うちにはありません。はい。よろしいですか?」
「……はい。ご迷惑おかけしました。」
電話が切れる。
心に棘が刺さったような感覚。
多分、その時は忙しかったのだろう。
多分、同じことを2回も聞かれて少しイラついてしまったのだろう。
多分、一回目の答えは絶対的なものだったのだろう。
多分、そんな相手はそんなことを意図してもいなかったかもしれない。
ただ、その人が意図的か、無識的にか発した言葉の硬さは僕の心に少し刺さった。
僕が悪い。
だから、慰めて欲しいわけじゃない(かといって責めて欲しいわけでもないが)。
僕が同じことを2回聞いたのも悪かったし、その人の言葉の硬さを真正面から受け続けた僕の内面も悪い。
ただ、その瞬間、通い慣れた店を一つ失うような、形容し難い喪失感を味わった、というか味わっている。
僕はその店が好きだった。提供される商品だけでなく、その店の雰囲気が好きだった。
確かに店員さんは常に忙しそうにしていたが、僕はその店が好きだった。
ただ、今は少し行きにくい。
僕は電話口で僕の名前を名乗っていない。
それに、声だけで特定されるほど通い詰めてもいない。
だから、「2回も電話してきたヤツ」と「今日来店した僕」が同一視されることはほぼあり得ないと言っていい。
それでも、僕はその店で味わう雰囲気をもう味わえない気がしている。
「世の中には店がごまんとある。代わりなんていくらでもいる!」という話ではなく、僕はその店にいる時間が好きだった。
それを失ってしまったような感覚が、棘のようにジクジク痛む。
これはそんな、小さな喪失のお話。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
今日も一日、お疲れ様でした。
